現代アート市場において、なぜ売れるアーティストと売れないアーティストがいるのか。
この問いに対する答えは単純ではないが、コレクター視点とアーティスト視点の双方から整理すると、ある程度の法則が見えてくる。
コレクター視点:売れるアーティストとは?
コレクターがアートを購入する理由は多岐にわたる。
純粋な美的興味、資産価値の向上、アーティストの哲学への共鳴、コレクションのコンセプトとの整合性——これらの要素が絡み合いながら、最終的な購入が決定される。
しかし、コレクターは必ずしも「売れる作品」そのものを求めているわけではない。
むしろ、アーティストそのものに対する「ブランド価値」や「ストーリー」に惹かれることが多い。つまり、作風だけではなくキャラクターも重要なのだ。
この点で、売れないアーティストの典型は、マーケティング的な視点を欠いている者である。
「自分はこういうアーティストである」と思い込んで、その作風を無理に押し付けてしまう。
だが、他者から見たときに、それが共感を生むものでなければ意味がない。
アーティストが独りよがりの表現に走れば、コレクターの関心は薄れ、作品は市場に出ても手に取られることはない。
逆に、売れるアーティストは、自らのキャラやストーリーを一貫して発信し、コレクターが「推したくなる」ような存在となる。
そして、作品だけでなく、自身の言葉や発信内容にも共感を生み出せる要素を盛り込んでいる。
加えて、適切なギャラリストと連携し、マーケットに響く販売戦略を築いている。
アーティスト視点:どうすれば売れるのか?
ここでは、敢えて「作風」には触れない。
なぜなら、同じような作風の作品を作るアーティストが二人いた場合でも、売れるかどうかの差は明確に現れるからだ。
「俺はアーティストだから好きなものを作るんだ」という考え方に固執する人は少なくない。
特に、美大出身者の中には「デザイナーはクライアントのニーズに応じて作るが、アーティストは自分の好きなものを作る」という古い理論を信じる者も多い。
しかし、この考え方はもはや時代遅れだ。
現代では、アーティストもマーケティングの基礎知識を持つべきであり、市場の需要を無視した作品づくりは、単なる自己満足に終わってしまう。
例えば、ストリート系のTシャツショップに可愛らしい動物柄のS・Mサイズばかりを並べても売れないだろう。しかし、そこにロックテイストのXL・XXLサイズのデザインを展開すれば、ターゲット層に響く可能性はぐっと高まる。
アートも同じで、市場のニーズを無視して作品を作り続けるアーティストは、ギャラリストから「扱いにくい作家」と見なされる。
売れるアーティストになるには、展示ごとにギャラリストと意見を交わし、市場が求める方向性を理解しながら、そこに自分の表現をどのように組み合わせるかを考えなければならない。
ただの妥協ではなく、自分のスタイルを維持しながらも、時代や市場の要請に適応する柔軟性こそが求められるのだ。
プロフェッショナルとしての視点
売れるアーティストは、一時的に作品が評価されることに満足するのではなく、長期的な視点を持ち続けている。
継続的に作品を売り続けるためには、プロフェッショナルとしての考え方が不可欠だ。
「美術家はこうあるべきだ」といった旧来の固定観念に固執する者は、これからの時代で生き残ることは難しい。
柔軟な思考を持ち、変化に適応できるアーティストこそが、今後も市場で求められるだろう。
もし、自分の作品がなぜ売れないのか分からないのであれば、コレクターの視点を持つギャラリストに意見を求めるのが最善の策である。
彼らは多くの顧客と対峙しており、市場のリアルな反応を把握している。こうしたアドバイスを素直に受け入れ、実践するアーティストは成長し、最終的には売れる存在へと変わっていく。
まとめ
売れるアーティストは、自らのブランドを築き、そのストーリーを伝える力を持っている。
そして、コレクターにとって魅力的なキャラクターであり続けることができる。
また、作品だけではなく、言葉を通じて共感を呼び起こし、長期的に生き残るためのプロフェッショナルな視点を持つ。
一方で、売れないアーティストは、マーケティングを軽視し、自己満足な作品を作り続ける傾向がある。
市場の流れを無視し、独りよがりの表現に終始すれば、コレクターの目に留まることは難しい。
SNSや文章での発信を怠り、共感を生む努力をしないアーティストは、やがて市場から見放されることになる。
アートは「売れる・売れない」だけで語れるものではないかもしれない。
しかし、売れることで継続的な創作の場が確保され、より多くの人に作品が届くのもまた事実である。
売れるための努力を怠らず、プロフェッショナルとしての自覚を持つことこそが、アーティストとして生き残る鍵となるのだ。
2025年2月21日(金) ~ 3月11日(火)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
※初日2月21日(金)は17:00オープンとなります。
※オープニングレセプション:2月21日(金)18:00-20:00
入場無料・予約不要
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F
tagboatのギャラリーにて、現代アーティスト手島領、南村杞憂、フルフォード素馨による3人展「Plastics」を開催いたします。「Plastics」では、表面的な印象や偽りの中に潜む本質を提示した3名のアーティストによる作品を展示いたします。